武蔵野女子学院中学校文化祭「樹華祭」作品

三年生の肖像「修学旅行の記念写真」★

東京都保谷市にある武蔵野女子学院の文化祭は10月3〜4日に行われました。中学3年生全員による壁画制作です。各生徒が貼った台紙を組み合わせる作業も全て文化祭委員の手によって行われました。この作品が文化祭当日の読売新聞や毎日新聞の朝刊でも大きく取り上げられたため、多くの来校者がありました。完成した壁画は思っていたよりもずっと仕上がりが良かったのでびっくり。全てが完璧にいきました。

当初は文化祭当日の早朝にお披露目する予定が、新聞社で取材のため前日に数多くの人の目に触れてしまったそうです。しかし、その出来映えに満足しみんな感動していたということです。
830×300のドット数は「他校の作品集」の中ではダントツの数字です。これには、作品集をまとめているわたしたち生徒会もびっくり!

武蔵野女子学院から3年生の「感想」をいただきましたのでご紹介します。

◆ 最初は何とも思ってなかったけど、完成してみたら、一人一人の顔がわかってすごいなと思った。
◆ 私は細かい作業が下手だし、嫌いだから、はっきり言って作業は楽しくなかった。でも、できあがった貼り絵を見たら、すごい物ができて、びっくりした。けっこう感動した。
◆ まさか写真とは思ってもいなかったので、感動した。自分たちの顔が区別できるのがうれしい。いい思い出になった。
◆ でき上がるまで、何か分からないところが良かったと思う。本当に実物を拡大したような感じで、自分がどこにいるか分かって嬉しかった。みんなの力で作ったから、とてもいい思い出になったと思う。
◆ 最初、配られたときは大変でイヤだった。それに、何ができるのかも分からず。そして文化祭前日、つるされた絵をみてすごく感激して、イヤだったことは全部忘れてしまった。
◆ まさか集合写真だとは思わなかったので感動した。作っているときは大変だったけどあんなに大きな作品ができたので本当に良かったと思う。
◆ すごいと思った。何ができ上がるのか知らなかったからよけい。とにかくびっくりした。
◆ 文化祭の良い目玉になったと思う。思い出づくりになった。
◆ 貼り絵にはけっこう時間かけたし、目もチカチカするしで、ちょっと大変だった。だから貼り絵の出来が悪かったらどうしようかと思ったけど、作品を見たら、そんな気持ちふっとんだ。「わあ」と声が出た。やって良かったなと思った。
◆ 初めて見た時何とも言えないほどだった。よくながめているうちに清水寺で写真を撮った時の事を思い出して懐かしくなった。来年の中学3年生にも、こういう壁画を作って欲しい。あと、大きさは今のままで良いと思う。
◆ 紙でこんなにすごい絵ができるなんて……。
◆ 作ってるときも楽しかったし、できあがってすばらしいできあがりだったのでよかったと思います。
◆ 貼り絵をしている時は、すっごい面倒でやりたくなかったけど実際、出来上がったのを見るとけっこうすごいと思った。中3全員は無理だよとか話してたけど全員だったからおどろいた。自分のやった絵があるとけっこう感動した。
◆ 学年が1つになって1つのことをやるのはいいと思った。作ってる時はなんかけっこう大変で嫌だったけど完成したのをみた時はそんなこと忘れてしまった。まさかあの写真が貼り絵になるとは。
◆ 近くで見ると何だかわからないけど遠くに行くにつれてだんだんと絵になっていくのが不思議。とてもいい思い出になった。
◆ 初めはなにができるのかわからなかったけど貼り絵をしてみたらびっくりした。一人一人の顔もわかったし、またやってみたいと思った。


読売新聞(1998.10.3)
色紙25万枚巨大はり絵----集合写真を精巧に再現----
 保谷市新町にある武蔵野女子学院中学の三年生、百七十人全員が、1a四方の色紙約二十五万枚をはり合わせ、二日、縦三・一b、横八・三bという巨大な写真画を完成させた。きょう三日と四日に開かれる学園祭「樹華祭」に合わせた力作で、今年五月の修学旅行の道すがら、京都の清水寺で撮った学年全員の集合写真を見事再現している。
 文化祭実行委員の三年生八人は六月から、学校全体で何かを作ろうと検討を重ねてるうち、パソコンのインターネットで、大阪の高校生がはり絵で写真を再現したことを知り、これに挑むことにした。
 二学期が始まった九月から、各クラスではホームルームの時間や放課後、時には自宅に持ち帰り、はさみで色紙を一a四方に切り、設計図に従ってB4判の台紙に張り付けていった。生徒一人当たり約千五百枚の切片を張り付けた勘定だ。
 各生徒は、自分に二枚ずつ割り当てられたB4判のパーツだけ見ても、それが最終的にどの部分になるのかは、わからない。題材が修学旅行の集合写真であることも秘密のまま、パーツの組み合わせ作業は実行委員だけで進められた。
 実行委員にとっても、写真画は、二十bぐらい離れないと全体の出来は判別しにくい。二日完成し、校舎に揚げられる、委員たちは感激の声をあげた。
(中略) 文化祭実行委員も、「ずれないようにはるのが難しかった。みんなの顔がちゃんと識別できて良かった。放課後、残って頑張ったかいがあります」と話していた。


毎日新聞(1998.10.3)
張りました25万枚----1aの色紙で巨大写真画制作----
 保谷市新町1、武蔵野女学院中学(580人)の3年生が、修学旅行の時、全員で撮影した記念写真を元に縦3・1b、横8・3bの巨大写真画を作った。制作には3年生170人全員が参加、1a四方の色紙約25万枚を根気よく張り付けた。3〜4日の文化祭で発表される。
 同校では6月から文化祭の発表について準備を始めた。「中学では最後の文化祭。何か一つのことをみんなで協力してできれば」と、最初は空きカンを使った壁画に挑戦しようとしたが、完成後ごみ処理の問題があり断念。その後インターネットのホームぺージで見つけた巨大写真画作りに取り組むことに決めた。
 題材は、5月6日から3日間の日程で行った修学旅行の記念写真。京都の清水寺をバックに、3年生全員が一緒に写っている唯一の写真だ。文化祭担当の教諭が、これまで写真画制作の経験がある大阪府の高校教諭の協力を得て、写真を24万90000コマ、8色にパソコンで処理。生徒は9月初めから8色の色紙を切って、1a四方の約25万枚の切片を作り、この切片をパソコンで処理した画像と同じ順番にのり付けして完成させた。
 小さな紙を使った細かい作業のため、のり付けのためにピンセットを買い込んで作業した生徒も。どんな写真を使ったかは、文化祭担当の委員9人以外には知らせておらず、2日に完成した写真画を見て、委員以外の生徒は「まさか修学旅行の記念写真だったとは」と驚いた表情だった。
 文化祭委員長さんは「完成してとてもうれしい。卒業に向けたいい思い出になると思う」と話していた。



巨大貼り絵ができるまで〜武蔵野女子学院中学校教員レポート〜
 10月の文化祭において、壁画を展示しようと文化祭委員の間で決まったのは6月になってからだった。当初は、ペットボトルのふたを集めモザイクアートにしようとしていたが、作品にするまでにはあまりにも多くのふたを集めなければならず、実行不可能と言う結論に達した。その後、空き缶によるモザイクアートも検討したが、展示後の処理の問題でこれも断念。最終的に処理が楽な紙を材料にすることに決まった。紙は軽く加工もしやすく、また集める苦労もなく、終わった後は燃やす事ができた。そもそも紙を使ってモザイクアートにすると言う発想は、インターネットで得た。大阪北淀高校が、紙を使って巨大壁画(と言ってもそれはほとんど写真に近い作品であった。(*写真1)を作成したという情報を得たのだ。これには随分と感動し、170名の生徒が集まれば我が中学校でも実現できるのではないかとの甘い判断の元、この計画はスタートしたのだった。
 今回の巨大貼り絵作成にあたって全面的に協力して下さったのが、大阪守口北高校のM先生である。使用する写真が修学旅行時に清水寺で撮影したもの(これは中学3年170名全員が写っている唯一の写真である)に決まり、私の方でパソコンを使って8色に減色した。そのファイルをM先生に送付し、設計図を作っていただいたのだ。設計図とは、各ドットの色を漢字に変換したものである。(*写真2)後に生徒はその設計図に基づいて貼り絵作業を行うこととなる。大きさも縦3メートル・横8.3メートルに決定し、もう引き返せないところまで来ていた。 8月中旬、私はリブレットを片手に、鰍s紙業へ出向き、色紙を画面上で合わせながら決めていった。色合わせも大変であったが、紙の大きさも重要であった。1ドット=1平方センチで作ることにしていたが、できる限り簡単に色紙を加工したかったため、無理を言って8×8センチにカットしていただくことにした。8×8センチであれば比較的容易に作業が進められと考えていた。
 8月下旬、M先生から送っていただいた設計図を台紙の大きさに合うように分ける作業を文化祭委員で行った。色紙を貼りつける台紙は、ホリイOA原稿用紙(ブルーの罫線が入っているもの)を使い、縦22ドット・横32ドットとした。その台紙に合うようにドットを1つ1つ数えながら分けていった。
 9月1日始業式の日のことは今でも忘れられない。届いたばかりの色紙を実際に1センチに切ってみたのだがそのあまりの細かさに呆然とした。貼り絵をする上で、その大きさは予想していたよりもずっと細かく、かなりの困難が予想された。特に中学生が作業をする訳であるし、人がそばを歩いただけでも飛んでしまう位小さかったので、すぐに色紙が紛失してしまうのではないかといった心配もあった。計画はスタートし、時間だけが確実に過ぎていた。正直な話、実現できないのではないかとも思っていた。ただ唯一の救いは、これが学年の共同作品であり、各クラスの出し物もそれぞれあったので、仮に失敗したとしても文化祭全体にはさほど大きな影響を与えないということだった。巨大貼り絵はおまけに過ぎない……そんなことを思いながら不安な気持ちを紛らわせていた。私がこの企画に大きくかかわるようになったのはそうした不安からでもあった。今思えばもっと生徒に任せっ切にする部分がもっとあっても良かったかもしれなかったが、計画はあまりにも壮大であり、ともかく残された時間が無かったので力が入った。
 9月中旬には何とか色紙の準備が整った。生徒はホームルーム・休み時間・放課後を使って作業をし、それでも終わらなかった分は家に持ち帰って切ってきたのだった。そしていよいよ貼る作業に入るわけだが、ピンセットを使用し、先に書いた設計図を見ながら1枚1枚丁寧に台紙に色紙を貼っていった。(*写真3)生徒は台紙2枚少しを担当したが、当然この作業も学校だけで終わるはずもなく家での作業になった。
 秋分の日前後には各台紙(365枚)も無事に集まり、今度はその台紙を組み合わせる作業に移った。この作業は文化祭委員の手によって行われた。文化祭当日に生徒全員を驚かせるために、何の絵になるのかを公表していなかったし、クラスの出し物に集中出来るようにここから先は文化祭委員のみの作業になった。その前の9月19日放課後に、集まった台紙を試しに会議室に並べてみたのだが、その時、この作品はきっと素晴らしいものになるとその場に居合わせた生徒と教師は確信していた。組み合わせ作業も結構大変で、微妙にずれが生じ、それを修正しながらの作業となった。全体を3ブロックに分け、マットメディウムというコーティング材を上から塗布した。(*写真4)そうすることによって、色紙が剥がれにくくなり、紙の強度も飛躍的に上がった。そして、紙と紙の接続部分に裏からビニールテープを貼りさらに強度を上げた。
 貼り絵の部分は何とか完成したが、新たな問題も出てきた。それをどのようにして吊り上げるのかということだった。8.3メートルもあるものを、破かずに上げなくてはならないのだから難しい。一番上の部分には竹を使った。これはM先生のアドバイスによるものである。学校の敷地内に生えていた竹を2本切って来て、曲がりを矯正した後つなぎ合わせ、ロープを取り付けるための金属製のフックをボルトで固定した。試し吊りは10月1日(この日は終日雨であったが)に行った。この竹に直接、絵を付けるのは難しいという結論に達したので、絵はもう1本のスチール製の棒に固定することにした。8メートルもの長い棒は当然存在しないわけだから、3本をつなぎ合わせてそれに絵を取り付けようと考えていた。
 先に書いたように、文化祭当日にあげる予定で全てが進んでいた。決して早くは無かったが、順調に進んでいた。だがここで最後の「大変な事態」が起こるのである。文化祭前日の午前中、まだ裏に補強用のテープを貼っている間、新聞社(読売・毎日)から「今日の午後1時に取材にくる。」といった連絡が入ったのだ。1日かけて貼り絵を組み合わせ棒に固定しようと考えていたわけだから慌てた。突貫工事でスチールの棒に取り付けることとなった。どうやって棒に固定するかが最後の壁であったが、1人の教員(H先生)のアイデアが解決の糸口を提供した。テーピングである。テーピングで輪をつくり無数絵に取り付けそこに棒を通した。テーピング自体も微妙に収縮し、また数多く取り付けることによってショックを吸収できた。絵を取り付けたスチールの棒をその後、凧糸で竹に固定した。取り付けは数多くの生徒・教員の手で慎重にバランスを取りながら行われた。(*写真5)こうして文化祭前日の1時過ぎに巨大貼り絵が完成したのである。(*写真6)文化祭当日に上げたかったといった願望もあったが、無事に引き上げることが出来、多くに生徒たちが感動し、満足していたのでそれはそれで良かったと思う。
 長いようで短かかった準備期間であった。今回は教師の目から書いてきたから、実際生徒がどのように捉えているのかははっきりとは分からない。私がかかわった部分も少なくは無かったし、文化祭実行委員だけで作業した部分もあり、そこに不満を感じていた生徒もいた。ただ最初に書いたようにこの貼り絵は「おまけ」の域を出なかったし、クラスの出し物に集中できた筈であるから結果的にはこれで良かったのではなかろうか。そして心配された天気も何故かあの3日間だけは快晴だった。風も強かったが、貼り絵の強度が思っていたよりもあったので壊れることは無かった。
 かくて巨大貼り絵は完成したのだが、生徒の感想にもあるように学年で1つの大きな作品に取り組めたことは素晴らしいことだった。170名が力を合わせて進まなければ決して実現することは無かった企画なのだから。いつの日かまたこうした大きな企画考えてみたいものである。その時には今回のノウハウが確実に生かされ、もっと生徒だけで、もっと余裕を持って望めるような気がする。(*写真7)



作品データ

1998年10月3・4日発表
東京都・武蔵野女子学院中学校3年
巨大モザイク壁画
830×300(ピクセル)×8(色)