山口県立小野田工業高等学校(定時制)文化祭作品

小工生の肖像「小工・定時制!」★

 集合写真による「モザイク壁画」が山口県にも登場しました。限られた人数での作品としては大きなもので、小野田工業高校の生徒さんがそれぞれの役割を果たした成果であり、出来映えも他校と肩を並べる作品に思います。当日は風が非常に強く屋外での展示も長時間できなかったとお便りいただきましたが、作品の写真は同校の入学案内にも登場するかもしれないということです。

巨大貼り絵ができるまで〜小野田工業高校教員レポート〜
    ・設計図制作
  1.  10月31日(土)に生徒の全体写真を撮り、それをスキャナーでBMPで保存。
  2.  「花子9」と「PaintShopPro5体験版」で画像を加工、コラージュなどで元となる画像を16万色でつくる。
  3.  それをPaintShopPro5で7色に減色。(PSP4.2J Liteもあったが、17色以下には減色できなかった。)
  4.  文具屋で色紙の現物(たてよこ15p)を見て、それをもとに6色(全部で7色だが白は不要なので)を決定する。この作業、文具屋でノートパソコンをもちこんで行ったのでややヒンシュクをかった。
  5.  減色した画像を今度はPSP4.2Jのグリッド表示で開き(逆にPSP5ではグリッドがドットごとに表示できなかった。)原画を最大まで拡大する。そのうえで再度PSP4.2Jを起動、キャプチャ機能を使って大判用紙(70×105p)のます目のたてよこの配置(30×42)とグリッドのそれとがあうようにキャプチャし、全体画を生徒分+αの30枚の画像に分解する。その際、それぞれのキャプチャ画の下に、後の作業がしやすいように、どの色が何番かを示したパレットもつけた(これがないと実際の作業はうまくいかなかっただろう)。色番号付きの分解画像をA4で人数分印刷。
     ここまでが個人でできた作業である。次に生徒の作業。
  6.  体育館で、生徒一人一人に分解画像を渡し、一人一枚のノルマで大判用紙のます目に色番号をいれさせた。パレットのおかげで書き込みの混乱やミスはほとんどなかった。大判用紙のます目の数は1240(30×42)なので白のない場合は1240個のすべてのますに数字を書き込むことになったが、この作業、予想よりも早くすすみ、2日間で、ほぼ全員が終了してしまった。
     作業時間でいうと約30人で30枚の大判用紙に数字を書き込むのに正味およそ約2時間(11月7日(土)80分、9日(月)40分)しかかからなかったことになる。
     設計図は完了した。


    ・貼り付け作業
  7.  貼り付け作業に先だって、色紙の裁断が必要だったが、これは出席簿や学校案内などの印刷をお願いしている業者の方のご厚意で無料でしていただいた。また、必要枚数の計算には<康さん>製作のフリーソフト「pallete」を使わせていただきました。
     貼り付け作業には11月10日(火)からとりかかった。用紙が大きいので作業会場は引き続き体育館。床を汚してはいけないので、のりはすべてスティックのりを使用した。これは大変不経済ではあったが、通常の工作のりで床を汚さず作業できるかどうか自信がなかったための選択である。 
  8.  一人一枚のノルマだったが、クラス単位でのノルマも課し、早く作業が終わった者も、クラスの別の生徒を手伝わなければならないようにした。
     11月10日(火)から毎日ほぼ40分間を作業に費やしたが、5日目(土日除く)の16日(月)には作業を終了するクラスがでてきた。このクラスは生徒数6人のクラスだったが、教員2名をあわせた計8名で、7枚の大判用紙を仕上げた。作業能率を逆算すると、40分間で1人がで2.5p角の色紙を約200枚貼り付けたことになる。
  9.  ほかのクラスも18日(水)までには仕上がったので19日(木)、20日(金)はOFFとして21日(土)に大判用紙同士の合体作業をすることとした。予想よりはるかに早く貼り付けは終わった、かに見えた。


    ・トラブル発生
  10.  作業の間にすでに心配していたことだったが、貼り付けの終わった19日(木)の段階ではっきりと浮かび上がった問題があった。それは、モザイク画がほかの学校での報告のように写真のようには見えないということであった。
     原因は、私の色の選択ミスにあった。画像のデザインとして、生徒の顔写真を使っていたのだが、頬やおでこなど、明るいところは周りの色より「薄い」色にしなければならなかったのだが、私は色の濃淡よりも「色合い」を優先してしまっていた。限られた色数の中でのことだったので結果的に頬やおでこなどがまわりよりも濃い色になってしまっていた。大判用紙を遠くから眺めてみると、顔の光っているはずの部分が何か「できもの」でもできているところのように見えた。
     修正すべきかどうかについては教員の間にも賛否があったが、協議の結果、修正することにした。いったん宣言した20日(金)のOFFは取りやめた。
     生徒たちが修正に納得するか不安でもあったが、立派な出来にすことに意味があると考え、修正に至る経過を伝え、色選択のミスについては謝罪した。反発はほとんどなかった。
     貼り替えの紙片は、3500枚くらいだったので1時間半くらいで貼り替えることができた。貼り替えには「わら半紙」を使った。このとき他の教員が学校の裁断機で裁断してくれたのだが、手作業でやってもさほどの手間ではないことがわかった。ただ、手作業の場合、色紙はB4くらいの大きな方がいいと思う。(無駄な部分が多くなるので)
     このミスにより、色紙を選ぶときは、色合いよりも色の濃淡を優先させなければならないということがわかった。極端にいうと、濃淡さえしっかりしていれば白黒でも写真のように見えるだろう。


    ・合体作業、仕上げ
  11.  21日(土)に翌年度の入学案内用に写真撮影をすることになったので、20日(金)に、色の貼り替え後、大判用紙同士の合体作業を行った。用紙の縁をスティックのりではりつけ、さらに裏側を荷造り用テープで補強した。テープの補強は両サイドの縦辺にもおこなった。
  12.  21日(土)には撮影のため体育館での吊り上げ作業を行うこととなった。つり上げの準備は以下である。
    ・吊り上げ用の棒づくり
    園芸用の緑の棒を使った。長さの種類がいろいろあり、太さ、重さもさほどでなく値段も手頃だったことが理由である。棒はモザイク画の上下に使った。モザイク画の横幅が6.3メートルくらいだったので、2.7メートルを2本と2メートル1本を針金でつないだ。
    ・棒を通す筒の部分
    モザイク画の長さに合わせて大判用紙を横向きに6枚貼り、それを半分に2回折り、筒を作った。筒とモザイク画の接合は、モザイク画の縁を筒の合わせにはさみ、そこを木工用速乾性ボンドと荷造り用テープで接着させた。
     体育館ではステージ天井のバトン(日の丸などを吊り下げる横棒をこう呼ぶそうですね)に、ひもで3カ所を固定して吊り下げた。色のミスを修正したおかげで写真らしく見えた。写真屋さんが来られるまでみんな静かに眺めていた。


    ・文化祭当日の掲示
  13. 11月22日(日)は風が強かった。佐賀県では気球の大会が強風のために中止になった。午前11時に校舎の4階廊下から吊り下げたモザイク画は12時になって強風にあおられて裂け、たった1時間の掲示となってしまった。
    雨については気になっていた(といって対策があったわけではないが)が風についてはまったく予想外だった。裂けないで済む対策として出された意見としては、
    • 本校の、むき出し廊下の校舎ではなく壁面の使える校舎に掲示すること。
    • 補強の荷造り用テープは紙ではなく布を利用すること。
    • 実際はモザイク画の下側をひもで固定していたが、風が強い場合はその固定を解き、横棒も抜いて風まかせにあおられるようにすること。
    • モザイク画全体に図書用ビニールシートを貼る(高価過ぎ??)こと。
    • モザイク画全体の裏面に「さらし」をのりづけし、補強すること。
    などであった。
     生徒の反応であるが、「感動した!」とか、「すばらしい!」というようなはっきりした言葉は聞かれなかったが、ほとんどの生徒が自分の役割をきちんとこなしたし、作業全体を通じて出来映えについて多くの生徒が関心を寄せていた。


作品データ

1998年11月22日発表
山口県立小野田工業高等学校定時制
モザイク壁画
252×150(ピクセル)×7(色)